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逃げ場
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ずーっと放置しっぱなしだった拍手お礼。
日の目見てないのでここに移動。
まずはイチルキ。



「お前くちびるかさかさ」
そう言われて舌で舐めると鉄の味がした。
「切れてんじゃねえか」
別に構わん、と言って歩きだしたら腕を掴まれた。
「そうやってすぐ舐めるからいけねえんだよ」
振り向かされて顎をつかまれ上を向かされた。顔が近づけられた。
掴まれた腕から上昇した体温が伝わってしまうのではないかと怖くなった。
お互いの吐息がかかるような距離で吐かれた白い息は存外に冷たかった。
なんだが無性に寂しくなって吐息とは対照的にやけに熱い手を振り解こうと頭を左右に振った。
「暴れるな」
そう言った声は低く、冬の空気に少しかすれた。
顎をしっかりとつかまれて強制的に少しくちびるを開かれ、あの少し色素の薄い、けれど酷く強い目に耐えられず私はぎゅっと目を閉じた。


次の瞬間、とろん、とした感触がひび割れたくちびるの上を何度か行ったり来たりした。
ふわり、と苺の香りが鼻をくすぐった。

 

 

春の匂いがした。

 

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