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逃げ場
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さらに海ルキ。


「ほっぺの皮剥けてるぞー」
そう言われて反射的に手で頬を覆った。
特に変わった感触はしない。
「触った位じゃわかんねーよ。でも近くで見るとほら、荒れてる」
ぐいと顔が近づけられて、一気に熱が頭に集中した。
私の目線の高さには顎と喉があって、もともと薄いのだろうけれど
近くでみると確かに髭が生えていて男だった。心臓が脈打った。
そっと頬に手を当てるからさらに上がった私の熱が伝わってしまった。
次の瞬間手は離された。距離を、作られた。


「どうせ何にも手入れしてないんだろ。今日からこれ使え」
渡されたのは液体の入った桜色の小瓶。
「お墨付きだから」
誰の、とはどうしても聞けず、しかし聞かずとも答えは分かっていた。
この小瓶の中身を私はたぶん、一生使う事は無い。
痛みの証として静かに部屋の片隅に置いておくのだろう。

 

 

冬なんて終わってしまえばいいと思った。
春なんて来なくていいと思った。
 

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