逃げ場
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続いて恋ルキ。
「手の甲ひび割れてんぞ」
不意に手をつかまれてその温度にびくりとした。
髪の色は体温の色なのかと思えるほど熱かった。
「手ぇ冷たいな」
お前が熱いんだ、というと呆れたように息を吐き
子供と大人ほども差のある大きな手ですっぽりと私の手を包んだ。
大きな手は私の冷え切った小さな手に熱を送り込む。
目の辺りがちりちりとして胸が苦しくなった。
子供の様に無性に反抗したくなって、別に冷たくとも構わん、と言って手を振り解こうとした。
「お前が構わなくても俺は構うの」
次の瞬間ぐい、と腕を持ち上げられひび割れて血の滲んだ部分をちゅ、と吸われた。
「俺があっためててやるから」
そんな風に私に肯定も否定もさせず酷く強引に包み込む手は優しかった。
ふたりの温度は混ざり合い冷たくも熱くもなくなり、ただ暖かかった。
冬が去る気配がした。
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